文章チェックの工程として「校正」と「校閲」というものがありますが、この違いを意識しているひとは少ないでしょう。しかしも近年は執筆者や編集者だけでなく、WebマーケターやWebディレクターなど、文章のプロではないひとも、文章をチェックする機会が多くなってきました。
文章のプロではないひとは「校正」と「校閲」の違いを意識することなく文章をチェックしているので、進行管理や品質にも問題が出てきてしまっています。今回は編集者&校閲者を仕事を通して身につけた「校正」と「校閲」の違いについて解説します。
1. 校正と校閲はなぜ必要なのか
文章に「校正」と「校閲」を加えることで、文章の品質を底上げすることができます。表記揺れや誤字脱字がない文章は読みやすく、事実に基づいて書かれた文章は説得力があります。内容が素晴しいコンテンツであっても、小さなミスがあるだけで信頼度は低下します。
また、コンテンツに不適切な表現があると、発信者の良識や品位が疑われてしまいます。「校正」と「校閲」の工程に力を入れるのは記事のの品質向上につながり、企業のブランド力を担保することにもなるのです。
「校正」と「校閲」は、執筆者や編集者の業務ではありますが、校正者や校閲者として専門の仕事として扱うこともあります。文章力はもちろん、幅広い教養、法令の知識なども必要な仕事なのでです。校正業務は誤字脱字のチェックが中心ですが、校閲業務は単純な文字の誤りだけでなく、文章の内容をよく読み、事実確認を行い、第三者だから気づける誤りや矛盾などを発見し修正します。
つまり「校正」は文章を及第点の60点に到達させる仕事、「校閲」は、ブラッシュアップを重ねて70点~90点に到達させる仕事です。「校正」も「校閲」も、記事制作において重要な工程なので、出版社や新聞社、印刷会社には専門の部署があり、「校正」と「校閲」のプロフェッショナルが業務を担当しています。
次の章では、「校正」と「校閲」の違いについて、より詳しく解説をしていきます。
2. 「校正」と「校閲」の違いとは?
「校正」と「校閲」は、どちらも記事の誤りを発見して訂正する仕事ですが、チェックする内容が異なっています。
校正とは?
「校正」とは、誤字脱字などの記述ミスの発見、修正を行う仕事です。また、修正前と後の原稿を照らし合わせて、誤植や色彩の違いなどがないかを確認することも「校正」の仕事に含まれています。
校正は、読むのではなく検査する
「校正」は、文字や文章を機械的に検査して、誤りを正すことです。誤字脱字などの明らかな誤りを検出して、修正を行います。また原稿の校正を行う中で、初稿と修正稿の間で全ての修正内容が反映されているかを漏れなく確認していくのも「校正」にあたります。
よって「校正」に必要なのは、文章力や編集能力というよりも、いかに漏れなくチェックできるか、いかに(ツールを使ったりして)機械的かつ効率的にチェックできるかが問われます。
校閲とは?
「校閲」とは、誤記はもちろん、表記の揺れ、事実関係の誤り、差別表現や不快表現などの不適切表現の有無まで、幅広くチェックし訂正していく仕事です。また、同じコンテンツ内で論理構成や内容に矛盾が起きていないかも確認します。
校閲は、読んで調べて正す
「校閲」は、原稿に書かれている文章の意味や内容を読み、誤りを正すことです。この業務がさらに「素読み」と「事実確認」という作業に分類されます。
「素読み」とは、執筆された原稿を読み、誤字や内容の矛盾など、さまざまな間違いを見つける作業です。「事実確認」とは、素読みをさらに掘り下げ、実際に原稿に書かれていること(地名や固有名詞、データ類など)が正しいのかを調べて確認する作業です。
このようにして、内容を徹底的に客観的に読み込み事実確認を行った結果を、編集者や執筆者にフィードバックします。自分で作業をする場合は、ひと通り「素読み」をしてから個々の「事実確認」をしていく、というように、それぞれの作業を個別に行うと精度が上がります。
3. 執筆者が「校正」と「校閲」をやらない理由
「校正」と「校閲」は、編集者や校閲者が行うことが多いですが、何故、記事の内容に一番詳しいはずの執筆者本人が「校正」と「校閲」を担当しないのでしょうか。もちろん執筆者も「校正」と「校閲」を実施しますが、できる限り執筆者以外の人に「校正」と「校閲」をしてもらう方が良いとされています。
執筆者ではない人がチェックをすることで先入観が無くなるだけでなく、チェックに大切な要素である客観的な視点が手に入るからです。「校正」と「校閲」は、文章を客観的に読み、間違いを見つけることですが、執筆者本人が自分の文章に客観的になって間違いを探すのは限界があるのです。人間には正しくない言葉を脳内で補完してしまう特性があります。例えば、タイポグリセミア現象(※)もその1つでしょう。
※タイポグリセミア現象(Typoglycemia)とは、文章中のいくつかの単語で最初と最後の文字以外の順番が入れ替わっても正しく読めてしまう現象。
例:ベストセラーの本→ベスセトラーの本
まとめ
今回は「校正」「校閲」の違いについて解説しました。シンプルにまとめると「校正」は制作上のミスを拾うこと、「校閲」は意味と文字を読むことです。「校正」も「校閲」も、徹底的に客観的に文章を読み、誤りを見つけることではありますが、それぞれの役割や業務内容には大きな違いがあります。
「校正」は、文字や文章を比べあわせて、誤りを正すことです。作業は、1つ前の工程と現段階の2つを比較する形で行います。「校閲」は、原稿に書かれている文章の意味や内容を読み、誤りを正すことです。作業は、原稿のみが対象になります。
「校正」と「校閲」、それぞれの違いを理解して、役割分担を思い起こしながら自分の仕事に活かしていきましょう。