インタビューの文字起こしが終わったとしても、まだインタビュー原稿は完成ではありません。
ただ単に文字起こしをしただけの文章は、読み物としてはまだ未完成です。
今回は、インタビュー記事を編集するときのコツを紹介します。
編集するときの4ポイント
ここではインタビュー記事を編集するときのポイント4つを解説します。
1:主語と目的語を補強する
会話をしていると、主語や目的語を省略して話すことがほとんでしょう。
たとえば下記のような会話があったとします。
Aさん:最近あった、父親との面白いエピソードを教えてください。
Bさん:弟と2人で暮らしていまして。ある日、母親と遊ぶために出かけたのですが、雨が降ってきたので、めっちゃ急いで走ったんです。(以下略)
何の違和感も無い普通の会話に思えますが、この会話を文章にしてみると途端に意味が分からなくなります。
まず、弟と2人で暮らしているのが誰なのかが分かりません。
恐らくは、Bさん自身が弟と2人暮らしをしているのだと思いますが、会話の流れ的に、父親と弟が2人暮らしをしている可能性もあります。
また、母親と遊ぶために出かけたのが、Bさんなのか、弟なのか、父親なのか、どれか1つに確定しません。
文章を読み進めていけば、誰が何をしたのかが、徐々に明らかになるのかもしれませんが、それでは良い文章とはいえません。
そこで下記のように推敲する必要があります。
Aさん:最近あった、父親との面白いエピソードを教えてください。
Bさん:僕は弟と2人で暮らしていまして。ある日、母親と遊ぶために弟と一緒に出かけたのですが、雨が降ってきたので、めっちゃ急いで走ったんです。(以下略)
勿論、憶測で主語を補強して良いのではなく、取材しながら「ちなみに弟さんと暮らしていたのはBさんで合ってますか?」みたいな感じでBさんに口頭で確認しましょう。
取材時に確認を忘れていたのであれば、文章の推敲時にこちらの推測で主語を補強しておき、Bさんに文章の確認をしてもらうことになります。
また、「あれ」とか「そういうこと」のような代名詞は、できるだけ使わないようにすると文章は引き締まります。
取材をした当事者たちにとって明らかな代名詞であっても、初見の読者はその代名詞が何を示しているのか把握できないことがあります。
代名詞はトル、またはその代名詞が挿し示す主語や目的語を補強してあげましょう。
2:結論を先頭に持ってくる
「質問に対してはまず結論から答える」とはよく言いますが、実際の会話において、結論から答える人はごく少数です。
また、インタビューの現場ではその場でインタビュイーに考えながら答えてもらうことも多いので、インタビュイーも質問に対して、頑張って言葉を並べながら、最後に結論に辿りつくことがほとんどです。
会話の雰囲気や空気感をそのまま記事にしたい場合は、インタビュイーが喋ったままの流れ(結論が最後に出てくる)で書くこともあります。
ただ、読み手の立場になると、質問に対してすぐに結論が出てこないと、だんだんイライラしてしまったり、質問の内容を忘れてしまったりします。
たとえば下記のような会話があったとします。
Aさん:1日何時間ぐらい練習をしていますか?
Bさん:そうですね…いつも朝起きるのが8時ぐらいでそこから朝ごはんを食べてから2時間ぐらい練習します。その後、少し情報収集をしてお昼ご飯を食べてから、晩御飯までずっと練習をします。晩御飯のあとも少し練習するので、1日の練習時間はだいたい12時間ぐらいですね。
インタビュイーもすぐに何時間なのか答えることができなかったので、自身の1日のスケジュールを振り返りながら結論に辿り着きました。
よくある会話の流れですが、情報を読者にスムーズに届けたいと考えるのであれば、良い文章とはいえません。
そこで下記のように推敲する必要があります。
Aさん:1日何時間ぐらい練習をしていますか?
Bさん:14時間ぐらいですね。睡眠と食事以外の時間はほぼ練習しています。いつも朝起きるのが8時ぐらいでそこから朝ごはんを食べてから2時間ぐらい練習します。その後、少し情報収集をしてお昼ご飯を食べてから、晩御飯までずっと練習をします。晩御飯のあとも少し練習します。
質問に対して、すぐに結論を答えているので、その後の文章が頭に入ってきやすくなります。
結論から答えるようにインタビューを編集すると、インタビュイーのことを聡明な人(頭の回転が速い人、デキる人)として表現できます。
ただし、結論から答える編集を過剰にやってしまうと、少しドライかつ高圧的な人に見えてしまうこともあります。
インタビュイーの人柄が読者に間違って伝わってしまうことになるので、インタビュイーの人柄や雰囲気に合った編集をしましょう。
3:間延びした表現をコンパクトにする
インタビュイーは、いろんな言葉を並べながら、自身の頭の中を整理しつつ発言することが多いです。
そうすると、同じような言葉が続いたり、発言がループしていたりします。
たとえば下記のような会話があったとします。
Aさん:いつ頃からスタートしたのでしょうか?
Bさん:たしか10年前だったと思います。スタート時はまだ北海道にいましたので。その後、広島に移って7年ほど、東京に移って8年ほどやりました。いや、そう考えるとスタートしたのは15年前ですね。
インタビュイーが思い出しながら話しているので、冗長的な文章になってしまっています。
話が前に進んでおらず、情報の密度も低いので、短くなるように編集しましょう。
4:話し言葉を書き言葉に直し過ぎない
インタビューは会話なので、話し言葉で行われます。
文字起こし直後の文章は、ほとんどの場合、話し言葉で構成されているでしょう。
掲載先のメディアのレギュレーションにもよるのですが、インタビュー記事はコラム記事と異なり、話し言葉を書き言葉に直すことは少ないです。
▼話し言葉、書き言葉については下記を参考
https://kiji-life.gonna.jp/index.php/buntai/
話し言葉はカジュアルな印象を与え、書き言葉はフォーマルな印象を与えます。
読み手に「インタビュイーに親近感をもってほしい場合」は話し言葉、「インタビュイーのことをリスペクトして欲しい場合」は書き言葉、など
記事を読み終わった読者とインタビュイーの関係を調整することもできます。
掲載先のメディアのレギュレーションに特に決まりが無い場合、編集者の判断に任せられますが、話し言葉を書き言葉に直しすぎるのは、あまりオススメしません。
理由は「インタビュイーの人柄が見えづらくなる」「会話の雰囲気が無くなりLIVE感がなくなる」「無機質な文章になるので、楽しいインタビュー記事を読みたい読者が離脱してしまう」
この辺りが挙げられます。
そのインタビュー記事で読者にどのような体験を与えたいのか、考えながら編集をしましょう。
さいごに
今回は、インタビュー記事を編集するときのコツを紹介しました。
インタビュー記事は一般的なSEO記事とは異なり、明確なルールは少ないです。
その分、自分の考え方や仮説を試すことができるので、とても面白くやりがいのある編集といえるでしょう。